自然史博物館 質問コーナー(発言の個別表示)

■発言したひと:岡本学芸員(2000/04/29, 発言番号:358)
Re[1]: 亜寒帯に針葉樹が生える理由についての質問
キーワード:タイガ 落葉針葉樹 落葉広葉樹
 タイガは冷帯(冷温帯)というよりは亜寒帯の植生です。東シベリアのタイガの主役であるカラマツの仲間の落葉針葉樹が生えているのは、永久凍土の発達したところです。夏の間に表面近くの凍土が溶け、そのわずかな水分を利用して生育しているのです。冬は凍結による猛烈な乾燥に襲われます。西シベリアや北アメリカの亜寒帯地域には常緑針葉樹のタイガが発達しています。ここも、土壌は凍結と融解を繰り返しており、樹木の根は表層の浅い部分に張り巡らされています。水条件としてはよい場所ではありません。
 北方の針葉樹林帯でも、川沿いなどの土壌や水分条件のよいところでは、ヤナギやポプラやカンバの仲間などの落葉広葉樹が生育しています。
 針葉樹類は、水分条件のよい環境では生長力が旺盛な落葉広葉樹に負けるため、水分条件の悪い環境(保水性が悪い、あるいは逆に停滞した水につかる等)に入り込み、そこでしぶとく大きく生長して生き延びる道を選んだものと考えられます。水分の蒸散を少なくするためには、小さい針葉は有利です。さらに、針葉樹類には道管がないため、急速な水運搬は不得手ですが、乏しい水を節約して使うのには適しているのかもしれません。

 したがって「なぜ、冷帯には広葉樹はないのか?」という問に直接答えるとしたら次のようになるでしょう。
 タイガの発達している土地は水分環境的に条件が悪い場所であり、広い葉をつけ、活発に光合成する植物(水もたくさん使い蒸散させる)には適していない。もし、針葉樹類というものがなかったら、恐らくそこにも被子植物が進出したと思われますが、その葉は針葉樹類と似たような小型化したものになると思われます。

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