アラカシ Quercus glauca Thunberg


公園や生け垣によく植えられる常緑高木。町中で拾われるどんぐりはたいていこの種類である。しばしば剪定されて植栽されるので低木のイメージが強い。他のカシ類に比べると全体に無骨な印象を受ける。照葉樹林だけではなくアカマツやコナラなどの二次林にも多く生育し、西南日本の山に最も普通のカシである。ヒリュウガシのような園芸品種もつくられている。


 
 [葉]は、卵状長楕円形で基部は広いくさび形になる。革質で厚く、粗い鋸歯があるのが特徴。表面は初め軟毛が密生するが後に脱落し、無毛となり光沢がある。裏面には絹毛を密生し、ロウ物質によって灰白色になる。先端から1/3ないし1/2ぐらいの部分が最も幅が広く、鋸歯はこの部分から先端にかけて多い。托葉は線形で長さ1 cm。新葉の展開とともに脱落する。
 [花]は4月下旬から5月中旬にかけて開花する。雄花序と雌花序がある。雄花序は当年枝の下部に下垂してつき、雌花序は当年枝の上部の葉腋につく。雌花序には数個の雌花がつく。

[果実]は開花した年の秋、11月ごろに熟する。堅果の成長は9月ごろまで非常にゆっくりしたものだが、10月にはいると急激に大きくなる。11月になるとかなり緑色の堅果でも落下してしまうことが多い。落下した堅果は数日で褐色になる。緑色の堅果では濃緑色と淡緑色の縦筋が美しい。堅果の頭頂部は無毛で、殻斗の圧着した跡による浅いリング状の模様がある。殻斗はリング状に総苞片が連なる。
 [樹皮]は灰黒色で小さな浅い割れ目ができる。シラカシなどに較べるとざらざらしている。[冬芽]は茎頂近くにかたまってつく傾向があり、よく分枝する。冬芽の断面は五角形になる。(藤井)